中野富士見町駅の近くに暮らし始めて、気づけばもう30年以上になります。
もともとは東京都下の日野市に住んでいましたが、仕事の関係で都内への引っ越しが必要に。馴染みのある中央線沿線の荻窪や高円寺、阿佐ヶ谷などにも憧れがありましたが、駅からの距離や家賃が条件に合わず。
そんな時、不動産屋さんに紹介されたのが、中野富士見町駅から徒歩10分ほどの場所にある築20年の賃貸マンションでした。
家賃は6万円。ちょっと変わった物件で、もともと3LDKだったお部屋をリフォームして、3つのワンルームに分けた女性専用マンションだったんです。
玄関はひとつ。でも、それぞれの部屋にバス・トイレ・キッチンがついていて、今でいう「シェアハウス」に近いかもしれません。
当初は女子寮のように門限があるのでは?と少し心配していましたが、実際に住んでみると、隣人と顔を合わせる機会はほとんどなく、プライベートはきちんと守られていました。
住人にもいろいろな方がいました。
ある日のお隣さんは、どうやら役者志望の方だったようで、夜になると「神よっ、何ゆえにこのような苦しみを~!」なんてセリフが壁越しに聞こえてきたり(笑)。
こちらから挨拶しても目を合わせてくれない、小柄で地味な印象の方でした。
数年後のある日、駅前の牛丼屋さんに入ったら、厨房でその方が働いている姿を見かけて驚きました。今も芝居を続けているのかな、と思いつつ、同じ部屋のマンションに住むただの隣人。知らない人のふりをして、牛丼をさくっと食べて店を出ました。
もう一方のお隣さんは、少々問題のある方で。大家さんとよくケンカをしていたり、たびたび酔っぱらって部屋のドアの前で寝てしまったり。初めは「大丈夫ですか?」と声をかけていましたが、何度も続くのでそれが普通になってしまいました。
その方が引っ越したあとは、40代後半の静かな女性が入居しました。
その方は持病を抱えていたようで、ある寒い冬の日、意識を失って救急搬送され、そのまま亡くなられてしまいました。これが“孤独死”というものか……と、私自身も独身で一人暮らしをしている身として、とても身につまされました。
一方で、このマンションの大家さんは本当に素敵な方でした。海外旅行の際にはスーツケースを貸してくださったり、お正月にはお部屋に呼んでいただき、手料理をごちそうになったことも。娘さんも含めて、とても良くしていただき、13年間本当にお世話になりました。
当時で大家さんは70代後半、娘さんは50代くらいだったと思います。今もときどき、あのマンションの前を通ることがありますが、お二人が元気に暮らしているといいな、と静かに願っています。
中野富士見町駅の魅力
暮らし始めてから気づいたのは、中野富士見町という街の“ちょうどよさ”です。
丸ノ内線の始発駅・方南町の一つ手前にあり、朝の通勤時間帯も身動き出来ないような強烈な混雑はありません。新宿までも10分ちょっとという近さで、都心へのアクセスも抜群です。
駅周辺はにぎやかすぎず、どこか下町のような落ち着いた雰囲気。コンビニやスーパー、昔ながらの商店もあって、一人暮らしにちょうどいい便利さがそろっています。
少し歩けば中野通りや和田堀公園もあり、季節の花を楽しみながらのんびり散歩できるのもお気に入りです。
この街に出会えたのは偶然でしたが、今では「ここを選んでよかった」と心から思える場所です。
コメント