「老後資金2,000万円」という金額は、多くのシミュレーションや統計から導き出された一つの目安です。もちろん、この金額は個人の生活スタイルや居住地、将来の医療費の有無などによって変動しますが、特に独身で一人暮らしの人にとっては、不測の事態にも備えた堅実な資金と言えます。ここでは、老後生活費の目安や資金が必要とされる理由について詳しく説明します。
1.老後の基本的な生活費
独身・一人暮らしであっても、老後には生活費がかかります。総務省の家計調査によると、無職の高齢単身者の1か月あたりの平均消費支出は約15万円から20万円とされています。
仮に月18万円と考えた場合、年間で216万円の支出が必要になります。日本人の平均寿命を踏まえて、65歳から20年ほどの老後生活を想定すると、約4,320万円が必要という計算になります。
ただし、この全額を貯蓄で賄う必要はありません。日本では公的年金が支給され、これは老後の生活費の大きな柱です。
しかし、年金だけで必要な額を十分にカバーできるかは、現役時代の収入や厚生年金への加入状況などによって異なります。
2.年金収入の現状
厚生労働省の調査によると、厚生年金の平均支給額は、年収300万円でフルタイムの会社員として働き、40年間厚生年金に加入した場合、厚生年金と基礎年金(国民年金の一部)の合計として年間約100万円~150万円が見込まれます。
自営業やフリーランスなどで国民年金のみ加入していた場合は、40年の加入で満額受給として年間約80万円が支給される見込みです。
3.老後の生活費と月々の不足額
現在、月18万円の生活費が必要な場合、老後も月々これに近い支出が予想されます。
老後の収入が年金のみで、受給額が年間120万円(毎月10万円)の場合、生活費の18万円との差額8万円が毎月不足します。
この不足分は自己資金から補填する必要があり、年間に換算すると96万円になります。
以下のように、老後20年分の不足額を計算すると、次のようになります:
年間の不足額:96万円
20年間の合計:96万円 × 20年 = 1920万円
つまり、年間120万円の年金では老後の生活費を十分に賄うことが難しく、この不足額をカバーするために、2000万円程度の自己資金が必要とされるのです。
4.2,000万円という金額の意義
以上のように、年金で不足する生活費、医療・介護の費用などを踏まえると、老後資金として2,000万円という金額は理にかなった目安です。年金と貯蓄の両輪で不足分を埋める形で、安定した生活を支えるためには、最低限の生活費の不足を補い、かつ不測の事態にも対応できる資金が求められます。2,000万円があれば、毎月の不足をカバーするための取り崩しや、必要に応じて資産運用に回す余裕も生まれます。
5.年利5%での運用ができた場合のシミュレーション
仮に2000万円を年利5%で運用できれば、投資収益も老後資金として使えます。
年利5%で運用した場合、年間の利息は100万円となり、年金の不足分96万円をほぼ補える計算です。これにより、元本に手をつけずに年金と利息収入で生活費を賄う可能性が生まれます。ただし、投資にはリスクがあり、必ずしも年利5%を安定的に得られるわけではありません。
運用をしながら元本を減らさずに生活費を補うという形を目指すことで、長期間にわたって資金が尽きるリスクを軽減できます。また、もし元本の一部を取り崩す必要が生じても、2000万円のスタート資金があれば、少しずつ元本を減らしつつも数十年は対応可能です。
6.万が一の備えと収入源の確保の難しさ
高齢になると、働いて収入を得るのが難しくなります。
健康維持ができたとしても70代以降は体力的に働くのが厳しいことが多く、年金以外の収入源を確保しづらくなります。たとえ60代でパートを続けられても、80代以降に収入がなくなる可能性もあるため、それを見越した資産形成が求められます。
また、家電の故障、住居の修繕、または家族へのサポートなど、突発的な出費にも対応できる資金の余裕が必要です。2000万円の備えがあれば、生活費の補填だけでなく、こうした突発的な出費にも対応可能となり、老後の経済的な安心感が高まります。
まとめ:2000万円の老後資金が必要な理由
以上を総合すると、年金収入が年間120万円で、月々18万円の生活費が必要な場合、老後の生活費、医療・介護費、インフレリスク、予測不能な支出に備えるために、2000万円の老後資金が現実的な目標となります。
さらに、年利5%での運用が可能であれば、元本を保ちながら生活費を補うことができ、老後資金の枯渇リスクも軽減されます。
少しでも早いうちから計画的に貯蓄や運用を行うことで、2000万円の目標は無理なく達成できる可能性が高まります。
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